チベット薬膳香について
チベットの薬膳香は、拝仏敬神のみならず薬として親しまれ、
中でも「コノテガシワ」は古来より珍重されてきました。
「コノテガシワ」はヒノキ科の植物の一種で、
チベットでは寺院で拝んだり山で神を祭るとき、
炉の中でコノテガシワの枝を燃やし、
それに酥油(バターのような羊や牛の乳を煮詰めて作った油)や、
「ツァンバ」と呼ばれるハダカ麦とエンドウを炒って粉にしたものを
バター茶で団子にし、それを火に入れたりします。
すると煙突から煙が上がり、これを「ウェサン」と呼んで
人間界が神の世界と通じ合うため、お祈りができるようになります。
これは昔ある老人が、山神を祭るために始めたと言われています。
コノテガシワは、古代チベットの吐幡(とばん)王国の時代から
薬として用いられ、チベット医学では欠かせないものであり、
コノテガシワを使用した薬膳香は消毒殺菌効果に優れ、
虫を寄せ付けず、身体の免疫力を高め、
疲労回復や体内調和の促進、
呼吸器感染や伝染病の予防に役立つとされています。
現在チベットの林芝(ニンティ)に「巨柏公園」があり、
公園には900余りの巨大なコノテガシワがあります。
その中で直径が5.8メートル、高さは50メートル余りにもなる
樹齢2600年以上の巨柏があり、
「コノテガシワの王様」と呼ばれています。
2002年に中国でSARSが大流行した際、、チベットの薬膳香は各地で
品薄状態になり、改めてチベット薬膳香の価値が見直されています。
西蔵尼木県呑巴村は首都ラサの西方に位置し、チベット文字の創始者であるトンミサンブーダの故郷です。
尼木県呑巴村はかねてより良質の薬草が取れることから、薬膳香としてチベット中で人気がありました。吐蕃33代ソンツェンガンポ王の時代、トンミサンブーダは石版印刷の技術を改良して、水車を使用した薬膳香作りを開発しました。これによりお香の主要な成分であるコノテガシワの木を削って潰す作業の過程で、綺麗な呑巴村の水流で木が濾過されるため、水中の生き物を殺傷することなく、清浄で比類ない良質の薬膳香を作ることに成功しました。
これが尼木蔵香が1300年の歴史を持つ高品質の薬膳香たる所以です。
尼木蔵香の主要成分はコノテガシワですが、他に白檀、紫檀、サフラン、カリラク、ニクズクなど、三十種類以上のチベット薬草が使用されていて、仏事はもちろんのこと、滋養や免疫力強化、殺菌、疫病予防、疲労回復など、薬膳効果の高いお香として、チベット全土で最も人気のある薬膳香です。
水流を利用した薬膳香作り。中央のオレンジ色の建物が水車。
水に浸しているコノテガシワの木。
この井戸で木の皮を削り、潰してパルプを作る。
パルプを固めてレンガ状にし、天日で乾かす。
コノテガシワのパルプと他の薬草を混ぜてお香の配合をする。
牛の角に穴をあけ、そこからお香を細く長く押し出す。
お香を天日で乾かしているところ。
お香を天日で乾かしているところ。
束にして糸で巻いて出来上がり!
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